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公開日時
2025/10/20 23:56
カテゴリ
一般登山

9/20-23 西穂高ー奥穂縦走と北鎌

場所
北アルプス 北部
日程
2025年9月20日 〜 2025年9月23日
メンバー
小西

9/20-23 4日間 ソロで新穂高ロープウェイ - 西穂高 - 奥穂高 - 槍ヶ岳 - 水俣乗越 - 北鎌 - 槍ヶ岳 - 双六小屋 - 笠ヶ岳-新穂高ロープウェイ行った山行記録です。

ジャンダルム- 奥穂 - 槍ヶ岳間以外初めてのルートでした。

1日目雨 西穂高 - 奥穂縦走 - 穂高岳山荘

夜1:30駐車場到着 ロープウェーも考えたがすでに始発は予約で満席、次の便では夕方到着の恐れがあることから、ロープウェーを使わない選択をする。登山道は無かったがYAMAPの皆んなの履歴を参考に歩を進めることとした。

仮眠をし5:40出発(7:30からロープウェイやっていたよう)歩いて尾根で8:00西穂高山荘着

前日に奥穂 - 西穂を縦走した女性2人組と会話、こんな天気の日に西穂山荘から奥穂に行く若者がいるらしい。変態は1人ではなく少し安堵する。

10:30西穂高岳時点で暴風雨🌀になる。思っていたよりルートは厳しい。撤退したいがそのまま行く。自分は軟弱なやつとは違うと変なプライドが見え隠れする。こんなつまらないプライドのために死んだ人も多いのだろう。そんな考えが頭をよぎる。でも、とりあえず進むことにした。僕はこの山行で何かを得にきている。

雨混じりの突風が下から突き上げてくる。幸い身体は濡れなかったが 顔と靴はずぶ濡れになった。しかし、理由は良くわからないが、嫌な感じは無く、ただ淡々と、工場の流れ作業をする工員のように、目の前にある無機質な岩を掴んでは超えていった。

濡れた岩は滑りやすくたまに足を滑らせる。落ちたら即死と思い3点支持で慎重に進むが、不思議と恐怖は無かった。

11:30何かが落ちる大きな音がした。石が落ちたような乾いた音ではなかった。ひょっとして先行者が落ちたのかと焦る。警察に電話しようと思ったが声がしなかったので違うのだろうと思い込むことにした。ただ自分なら落ちたら声は出さず、ひっそりと落ちていくのだろう。ひっそりと落ち、ひっそりと生命を終える。想像してもう一度気を引き締める。

12時天狗のコルにつく。前会長が冬山で西穂 - 奥穂をピッケル無し、丸くなったアイゼンで踏破した際、このコルでビバークしたと聞いた。ここまでの険しいルートを雪山でしかもピッケル無しで行くとは正気とは思えない。世の中にはどこか頭のネジが緩んだ人がいるが、どこか魅力的と思ってしまう。

13:30ジャンダルム登り口についた。パスしてもよかったがここまで来たら天使に会いにいこう。登った。しかしそこにあるはずの天使はいなかった。そこら中探したけどない。

あとで聞いたが、誰かが落としたらしい。それで代わりの天使を持ってきてくれる人もいたらしいが、国定公園にものを置くのがうんたらかんたらと撤去になったらしい。そんなつまらないことのために、この場所で何人がガッカリして行くのだろう。

やるせない気持ちを鎮めるため、代わりに標識にキスをして写真におさめたが、痛いオッサンが魅力的でない標識にキスをしても、相殺されず、ただ気持ち悪いだけだった。

馬の背にかかる。これをクリアすれば、比較的安心なルートだ。

ここでさらに風が強くなる。しばらく待つがおさまる気配がなく、仕方なくチャレンジする。風が右下側から左上に強く吹き付ける。

灰色の世界。

何の感情もなく、ただ目の前の岩と対峙する。左側に体を預け風を避けここもクリアしていった。

15時奥穂高、15:20穂高岳山荘に到着。ツェルト泊の予定だったが、この風ではツェルトは張りようがない。山荘のお姉さんに事情を話し、素泊まりをお願いした。お姉さんはずぶ濡れになったおっさんを哀れむような顔で2つ返事でうんうんと泊まらしてくれた。明日からどこに行く予定ですか?と聞かれたから、大キレット行って、槍の手前で東尾根を降りてから北鎌に登って槍ヶ岳に、、、と得意げに披露していたら、お姉さんは最後の方はめんどくさそうに、くるくると新体操のリボンのように書き殴ってメモをしまっていった。ああ、俺のたてた素晴らしい山行計画は山荘のお姉さんの前にして何の興味もなかったらしい。

同時に山荘に入った若い男性は一度テントを張ろうと頑張ったようだが、諦めたようだった。僕は暴風雨でテントを張ろうという彼の勇気に乾杯した。だが、折角ならテントを飛ばされたとか、自分がテントごと少し宙に浮いたとか少し盛って欲しかったが、彼にそんなジョークは持ち合わせていなかった。

食堂で食事の準備をしていると、どこから来たのか、明日どこに行くのかと聞かれたので、今日は新穂高ロープウェイから西穂高 - 奥穂縦走してきて、明日は大キレット - 槍ヶ岳 - 北鎌 - 槍ヶ岳に行く予定だというと。

すごいだの、ヒーローだの、変態だの、もはや人間ではない、など、さまざまな称号を頂いた。そのような賞賛をいただきながら気持ちよく眠りについた。

同じ様に西穂高山荘から縦走してきた人にもあったが、その人は雨風にやられたらしく、すっかり心が折れていて、明日早々に山を降りるとのことだった。

2日目

5時起床6時出発

雨上がりのモルゲンを期待したが、曇りは晴れず、涸沢岳からの槍ヶ岳も見えなかった。早々に準備して大キレットを北上する。

11時槍ヶ岳山荘に到着、当初登る予定ではなかったが、時間が余っていたので槍ヶ岳に登ることにした。

北鎌はバリルートで行ったことが無かったのでソロでルートを間違え登れも降りるもできなくなったらどうしようかとか悩んだが、結局行くところまで行こうと東鎌を降りた。

13時水俣乗越で北鎌に登りそうな3人が休憩してたので、北鎌はどんな感じか聞いた。そのうちの1人が行商で野菜を売っているおばあちゃんのような出立ちだったので、何だか自分にも行ける気がして沢を降りることにした。

14時20分テント場に到着

ツェルトを建てようと思ったがうまくいかなかった。仕方なく、木々の間にロープを張りツェルトを通して寝床を確保した。

隣で秩父をホームとする中年カップルが火を起こしていたので一緒に中に入らせてもらった。星空が綺麗な中、焚き火🔥で暖をとらせてもらい最高に気持ち良かった。2人とも独身で結婚はしていないパートナーだった。どうして結婚しないのか聞いてみたが、どうも聞いてはいけない質問だったようだった。そそくさと退散し眠りに入る。

3日目 北鎌沢 - 槍ヶ岳 - 双六山荘

3時起床4時出発

ヘッテンをつけて北鎌のコルまで進む。ここは迷いやすいらしく、沢で右右左と教えてもらったので、右右左と唱えながら登ったが、結局真っ暗だったので、どこに分岐があるのかよくわからなかった。しかしYAMAPの皆んなの軌跡を頼りに進むと、比較的迷わずに進むことができ、北鎌のコルに着く頃には5時、ちょうど明るくなってきた。

北鎌は比較的明瞭な道で迷いそうなところはあまりなかったがバリルートの初見ということで緊張した。程なくして、北鎌経験者らしき3人組に追いついたところで、ご一緒させてもらうことにした。

3人の先頭に立つ若者はクライミング技術に優れていたもののルートファインディングが下手クソで、僕を含めた後続の3人は、苦笑しながらより楽なルートを選び進めていった。

11時槍ヶ岳山頂、自分は4人目だったこともあり、山頂にいる人たちから歓声やねぎらいもなかった。 仕方がないのでひっそりと喜びを噛み締め、いそいそと写真の列に並び、ありきたりのピースサインで写真を撮ってもらった。そのあと、一緒に登った4人でグータッチした。本当はサンシャイン池崎ばりのテンションでイェーとか叫びたかったが、いい歳したおっさんがすることでは無かった。

LINE交換、4人は東京を拠点とした日本登坂クラブの人たちだったことがわかった。有名人ならサインを貰おうかと思ったがそうでもなさそうなのでやめた。

槍ヶ岳山荘で、食事しながら北鎌山行を反芻していた。このまま帰るのは惜しい。あと一日分の食料もあるし、南-東-北と槍ヶ岳につながる3本の尾根を踏破したので折角だから全ての尾根をコンプリートしたく、双六小屋へ降りることにした。

今回の山行では、いろいろな角度から槍ヶ岳が見え、感慨深かった。どこから見ても槍はかっこいいが、北鎌からみるそれは格別だった。

双六小屋には予約はしていなかったが最悪泊まれなかったら、夜中に新穂高ロープウェイまで降りて帰ろうかと思っていた。

17時到着。双六小屋のテン場についたが、双六小屋はテントで埋まっていたが、幸い予約キャンセルがあったためなんとか泊めさせてもらうことができた。

テント間の隙間に入れさせてもらった。風が吹いていたためポールを立てては倒れそ繰り返し、ツェルトを立てるのに30分を要した。日暮れも押し迫ったところだったので、今回の旅の核心だったように思う。何とか立つことができたが

風で飛ばされそうな不安に駆られ、結局、ツェルトから一歩も外に出ることができなくなってしまった。程なくして小をしたくなったため、袋を二重にし立膝をつき、ズボンをおろし、テント内で用を足すことにした。あたりはすっかり暗くなっておりライトをつけたまま行為となった。ヘッテンで灯された姿はさも鶴の恩返しのようなシルエットで外から映りだされたであろうが、周りからはただの変質者に映ったに違いない。

その後食事では、もはやツェルトの外に出ることは叶わず、ツェルト内で行動食を咥え、腹を満たしそのまま眠りについた。

4日目 双六小屋 - 笠ヶ岳 - 新穂高ロープウェー

3時起床4時出発

変質者の顔が特定されないよう、夜逃げのように暗いうちに出発した。 逃げたはいいものの、このまま何も登らず降りるのもつまらない、まだ登っていない百名山の笠ヶ岳に登ることにした。

9時笠ヶ岳到着

笠ヶ岳からみる槍ヶ岳やジャンダルムも拝むことができた。自分はここからこう行ってとか、感傷に浸りながら、山行を指で追っていった。途中で白い変わった山があったので隣でうんちく垂れているおっさんに、あのかっこいい山はなんという山ですか?と聞いたら、ただの雲だった。

バツが悪くなったので、お先に失礼し、笠ヶ岳山荘で休憩後、笠ヶ岳新道に降りた。

笠ヶ岳新道は下りがキツく、いつの間にか、足を強打していてゆっくりとしか動けなくなっていた。知らず知らずのうちに疲労が蓄積していて笠ヶ岳を登ったところで緊張感がなくなったのだろう。それでも足を引きづりながら、一歩一歩、歩を進める。降りても降りてもなかなか辿り着つかなかった。

降りる間は、降りてからお風呂に入り、どこの美味しいご飯を食べようかだけしか考えていなかった。4日間で得た最後の境地は「風呂に入りたい。美味しいものが食べたい」ただそれだけだった。

15時30分到着。下山報告を済ませ、栃尾温泉荒神の湯♨️(300円)の評価が良かったのでそこにした。町のお風呂らしく、無人で洗い場も石鹸もなく、男女の仕切りもガバガバなお風呂であった。湯温も程よく気持ちよかったが、大量の蚊のような虫がそこには浮いていた。